小倉の名物「肉肉うどん」をご存じだろうか。このネーミングを聞いた時“肉うどんの肉が倍入ったうどんのこと？”と思ったが、まったく違った。牛スジ肉や牛ほほ肉を煮込んでつくった真っ黒なスープのうどんのことで、炭坑や製鉄所で働いていた人たちがよく食べていた小倉南区のソウルフードだ。肉肉うどんを提供する店は夜を待たずに閉店する店も多いが、小倉駅近くの「千容」では昼も夜も注文ができる。

「千容」の「肉肉うどん（750円）」は、牛スジ肉のかたまりを何度も湯通しして余計な油を取り除き、ダシに入れてじっくり炊き込んでいるため、口に入れた途端、肉がほろほろとほどけていく。そのおいしさといったら、和がらしを付けて日本酒で一杯したら絶対おいしいだろうな！と感激したほど。気になるつゆは見た目からは想像ができないほどサラッとしていて、生姜を入れると味が一転！まろやかになる。

肉肉うどんと人気を二分するのが「牛すじカレーうどん（700円）」だ。3種類のスパイスを配合したスパイシーな味わいで、もっちりとした中太の麺はルーに絡みやすく、スルスルと口の中に入っていく。カレーうどんのルーは、1/3ほど残すのがツウな食べ方。残ったルーを白ごはんに入れたら絶品カレーライスに！どのうどんもハーフサイズでのオーダーができるので、気軽に訪ねやすい。

福岡の食を語る上でモツは欠かせない。噛むとモツの甘い肉汁がジュワ〜と口の中に広がる幸せな瞬間。濃いタレの味がさらに食欲を掻き立て、ツルツルとした麺の喉越しも抜群！そんなベストマッチなひと品をいただけるのが、守恒にある「源福」だ。“ホルモン鍋の〆に食べる味”をイメージしてつくった「もつ入り焼きうどん（800円）」は、昨年10月にメニューに加わった途端、人気に火が付いた！

焼きうどんの味を左右する極上のタレ。実は、北九州の台所・旦過市場で半世紀以上店を構え、地元の人たちからは“新井ホルモン”の愛称で知られている「新井商店」の秘伝のタレをブレンドしている。このタレは、肉を購入した人しか分けてもらえず、そのタレを使った料理を注文できる唯一の店が、姉妹店の「源福」だ。焼きうどんは熱した石鍋で出てくるので、ハフハフしながらいただこう。

肉屋の姉妹店だけあって、A5やA4ランクの高品質なお肉をリーズナブルに注文できるのも魅力。新井ホルモンで絶大な人気を誇る「ホルモン鍋」を野菜がたっぷり入った調理された状態でいただけるのもうれしい。焼肉とホルモンの店だが「焼きうどんだけを食べに来るお一人さまも多いから、遠慮してたらもったいないよ！」とのこと。全国に愛好者の多い新井ホルモンの味、この店にあり！

店の忙しさがひと段落したある日の午後。カウンターの端に立ったスタッフが「今日も一日ありがとうございました！」と爽やかな通る声で一礼し、奥へと引っ込んだ。何が起きたのかわからなかったが気持ちの良い挨拶に清々しい気分でいると、店主が「仕事が終わったので、お客さまにご挨拶をして帰ったんです」と教えてくれた。まだうどんにありついていないのに、一瞬で心を鷲掴みにされた出来事だった。

豊前裏打会の原点であるうどん屋「津田屋官兵衛」に弟子入りをし、うどんづくりを学んだ店主。麺の透明感ある美しさ。もちもちとした独特の食感。その日に使う麺はその日の朝に打つ姿勢からも、丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。その麺の味わいをストレートに楽しめるのが「ごぼうおろしぶっかけ（760円）」だ。麺が茹で上がるタイミングを見計らって揚げる天ぷらはサクサク感がたまらない。

過去に「今日はうどんはいらないから、天ぷらと白ごはんだけ食べたい」とリクエストしたお客もいたほど自慢の天ぷら。それらの声に支えられて、店から歩いて1分の「こがね市場」に「天ぷら八兵衛」を出店したという面白いエピソードもある。そんな人気の天ぷらと、肉、わかめ、卵を1つの器に盛った「久兵衛うどん」は、こんなに具だくさんなのに800円！心まであたためてくれる、そんな一杯だ。