築40年の古民家をリノベしたイタリアンレストラン。額縁で切り取ったような田園風景を眺めながらゆっくり食事ができる。「10月は、カツオやカマスに西洋野菜を加えたパスタを出したいなぁ。魚も野菜も鮮度が良いから、香りまで楽しめるんですよ」と穏やかな表情で笑うオーナーの柳野さん。メジャーな魚介だけでなく、市場に流通していない珍しい魚を仕入れる日もあり、「そんな日はどんな料理をつくろうか、考えるだけでワクワクします」とうれしそうだ。手づくりの石窯で焼く“定番”のマルゲリータは、この店ではバジルが採れる時期にのみ注文できる季節料理で、この話を聞いた時はどれだけ旬の食材を大切にしているかがストレートに伝わってきた。秋から冬にかけては、石窯を使った煮込み料理も食べることができる。

五島列島に点在する教会の数々。面積に対する教会の数ではおそらく日本一であろう。中でも堂崎天主堂は、1873年に信仰の自由化が認められた後、五島初の教会として建てられたシンボル的な存在で、当初は木造建築だった。その後、1908年に現在の赤レンガ造りの教会が完成。美しい海を臨むように建てられたその姿はクラシカルで、パリのノートルダム大聖堂と同じ様式や工法が随所に見られる。教会と向き合うように立っているのは、最初にこの教会を建てたマルマン神父と、後にレンガ造りの教会を建てたペルー神父の銅像。内部は現在キリシタン資料館として公開中で、椿を描いたステンドグラスは素朴でとてもかわいい。

堂崎天主堂の隣にあるフォトジェニックなテイクアウトの専門店。店先に立つのは、看板娘のキュートなおばあちゃん。溢れんばかりの笑顔で、訪れる人たちの心をほのぼのとした気持ちにさせてくれる。長崎の名物・チリンチリンアイスやバナナフロート、リンゴパンアイスなど、ディスプレイされた手描きの愛らしい看板にも注目。店の前には静かな入り江があり、海の底が透けて見えるほど透明感のある海が目の前に広がる。心地よい風景を眺めながらコーヒーが飲める幸せ。あぁ、なんて贅沢なんだろう。早起きが得意な人なら、旅の記念にモーニング利用はいかが？ 軒先のベンチに腰をかけて太陽の光を浴びながらトーストをかじると、それだけでパワーがみなぎりそう！

夜の帳が下りる頃、椿茶屋は淡いオレンジ色を帯びたブルーの世界へと包まれていく。木の格子からはあたたかな光が漏れ、旅人たちをやさしく出迎えてくれる。昼も夜も完全予約制だが、せっかく訪れるなら夕暮れ時を選びたい。染まりゆく空と海を眺めながら食事を始め、お酒を酌み交わしながら会話を楽しみ、店を出る頃には星たちが漆黒の空に瞬いている。五島での夕食がステキな時間だったと記憶に残る思い出をつくってくれるはずだ。

夜のコースは6000円、8000円、1万2000円と3種類を用意（すべて税別・写真は8000円のコース）。あたたかな囲炉裏を囲み、五島で収穫した島の恵みをいただく。その日、漁師から仕入れた魚やアオリイカ、五島美豚、五島うどん、島外では希少な五島牛など、至れり尽くせりなおもてなし料理の数々。塩や店の裏の畑で収穫した食材を使ってつくったという柚子胡椒など手づくり調味料も絶品なので、肉やうどんに添えて食べてみよう。地産地消をあえて掲げなくてもあらゆる素材が島内で揃う五島は、まさに食材の宝庫だ。