ウイルスに感染しにくい湿度はどれ?
「20-40%」
「40-60%」
「60-80%」
ホリデーシーズンは楽しいイベントやパーティーが続く一方で、風邪やインフルエンザにかかりやすい時期でもあります。この季節を元気に楽しむためには、日頃のちょっとした習慣が役に立ちます。今回は、感染を防ぐための効果的な方法や、かかってしまった時の早期対処法を解説します。
では、答えはどうでしょうか。
答えは・・・2の「40-60%」
湿度が低すぎても高すぎても感染に良くありません。最もウイルスの生存可能性が低くなる湿度は40−60%です。冬は40%未満になることが多いので、感染リスクが高まります。部屋に加湿器を置いて湿度を高める方法が有効ですが、部屋全体の湿度を上げることは意外と難しいものです。
他の予防法も組み合わせて、冬のホリデーシーズンを元気に乗り切りましょう。
point1水道水でのうがい
うがいは日本独自の風習で、平安時代から行われています。口に水を入れて上を向き、ガラガラ・・・とするうがい方法は海外ではほとんど見られない習慣ですが、実は高い風邪予防効果があります。
特におすすめなのは、水道水でのうがいです。水が喉で乱流を起こすことで喉についているプロテアーゼという感染を誘導する物質を取り除き、水道水にわずかに含まれる塩素が消毒作用を発揮するからです。水道水のうがいによってなんと40%も感染リスクが下がります。ちなみにヨード液でのうがいでは感染リスクの低下は12%くらいにとどまります。理由としてはヨード液によって喉の正常細胞が障害されてウイルスが侵入しやすくなることなどが考えられています。うがい薬がなくても、こまめに水道水でうがいをしてウイルスが体に侵入するのを防ぎましょう。
point2ハンドソープで10秒手洗いを2回行う
手洗いはとても効果のある方法です。また、手洗いの方法一つで感染予防効果が大きく変わります。下の表のように、1分間ハンドソープでもみ洗いした場合よりも、10秒間のハンドソープでもみあらい洗いを2回行った方が、ウイルスの数は100分の1ほどに減ります。外出から帰った時や食事の前には、ハンドソープで手洗い2回を習慣にしてみましょう。
手洗いの方法 | 残存ウイルス数 (残存数)※ |
---|---|
手洗いなし | 約1,000,000個 |
流水で15秒手洗い | 数10,000個 (約1%) |
ハンドソープで10秒~30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ | 数百個 (約0.01%) |
ハンドソープで60秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ | 数十個 (約0.001%) |
ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎを2回繰り返す | 約数個 (約0.0001%) |
※手洗いなしと比較した場合
出典:森 功次他:感染症学雑誌、80:496-500,2006
point3粘膜を強化する
ウイルスが付着しても発症しないように、体の防御力を上げることも大切です。ビタミンDは血液中の抗菌蛋白「カテリジン」を増やし、皮膚の抗菌蛋白「βディフェンシン」を増やします。さらに、小腸の粘膜の結合を強くし、ウイルスや細菌の侵入を防ぎます。
また、ビタミンDが少ないと、感染症を起こしたときに重症化しやすいことも分かっています。1日に必要なビタミンDの量は5.5μgです。日光浴でもビタミンDは作られますが、1日の必要量を日光浴で作ろうと思うと、冬は40分以上手足を出して外で過ごさないといけません。冬は、日光浴だけでは到底足りません。そこで、魚を食べることをお勧めします。シャケを1切れ食べると25μg、しらすぼしを10g食べると6.1μgのビタミンDを摂取することができます。
風邪やインフルエンザにかかってしまったら
早く治すには、十分な休養と睡眠が第一です。もう一つお勧めするとしたら、ビタミンCの摂取です。昔から風邪を引いたらみかんを食べると早く治ると言われていましたが、みかんに含まれるビタミンCは、強い殺菌作用や抗ウイルス作用があるのです。
病原体から体を守る白血球の働きを強化し、さらにウイルスを直に攻撃するという働きも持っています。それでいながら、がん細胞や病原体は攻撃しますが、体の正常細胞は攻撃しないので、「魔法の弾丸とも呼ばれるビタミンなのです。
ビタミンCが豊富な食材でこの季節にお勧めなのは、ブロッコリーです。抹茶などの飲み物で摂取するのもいいでしょう。ビタミンCは体から出ていくのも早いので、毎食で野菜や果物などを摂取してこまめに摂り続けることが大切です。
免疫力を上げるためのワンポイントアドバイス!
αオリゴ糖を摂取する
腸には免疫細胞が多数あり、腸内細菌を整えることで免疫力が上がります。善玉菌を増やすのに役立つことで近年注目されているのが、αオリゴ糖です。αオリゴ糖はバナナ、キャベツ、海藻、きのこなどに含まれています。血糖や中性脂肪を減らす効果も報告されています。
山下あきこ(やました・あきこ)
医学博士、内科医、脳神経内科医、抗加齢医学専門医、産業医、米国神経学会会員。
現在、医療法人社団如水会今村病院に勤務。人々が幸せと健康づくりを楽しむ社会を目指し、診療活動を続けながら執筆やセミナー活動を行なっている。「ホンマでっか!?TV」や「Z I
P!」などのテレビ出演も多数。著書に「やせる呼吸」「こうすれば夜中に目覚めずぐっすり眠れる」「死ぬまで若々しく元気で過ごすための賢い食べ方」「『やめられない』を『やめる』本−脱・依存脳」などがある。